ブルックスとの2006年夏

H.I.B.T.ハワイ国際カジキ釣り大会参戦記録

ブッルクスがチーム・キャプテンで獲ったI.G.F.A.公認大会初のグランダーをバックに!

ドアノブ・ルアーやTバー・ハンドルの開発者で、カジキ釣りの分野に数々の足跡を残したブルックス・モリスとともに、2006年7月末にハワイ島コナで開かれた第47回H.I.B.T.(ハワイ国際カジキ釣り大会)に参加した。

2006年2月、商用の途中で一年ぶりにブルックス・モリス氏を訪ねた際、彼から「今年で長年参加し続けたHIBTを最後にするかもしれない。きみも来ないか?」と誘われたのがきっかけだった。

僕はカジキのトローリング・ガイド&トローリング仕様のボートアレンジとカジキ釣りに特化したタックルの販売が仕事だから、H.I.B.T.が開かれる7月下旬はシーズン真っ只中。トーナメントに参加すると顧客に不便をかけるし、僕自身の生活にも影響が出るのは明白だった。しかし、第40回記念大会でドラマティックに優勝した「チーム・マウナケア」のメンバー、マリンプレゼンツの森藤隆美氏には以前から「H.I.B.T.は観ておくべき」と薦められていたし、日本のカジキ釣り大会のお手本になった大会だし・・・と、しばし躊躇。

ブルックスは ’85年のH.I.B.T.で、開発直後のドアノブ・ルアーで優勝した。翌 ’86年もドアノブでI.G.F.A.の公認大会としては史上初のグランダーを釣上げ(彼がチーム・キャプテン、ギル・クレイマ―氏がアングラー)、大逆転で2年連続優勝を成し遂げている。ブルックスが多くの想いを抱いてきたH.I.B.T.に彼とともに参加できる機会なんて一生に一度だろうと思い直し、「一緒にいくよ!」と、清水の舞台から飛び降りることにした。

2週間後、ブルックス・モリスの親友で弟的存在のデイル・ウォルドロンと会長を務めるモリス2名の推薦でカリフォルニアのラグナ・ニグエル・ビルフィッシュ・クラブの最年少のメンバーになったぞという知らせが届いた。

クラブメンバー合流後、ホテル横のバーで早速幸運を祈って乾杯!

大会前日

7月22日昼過ぎ、コナのキング・カメハメハ・ホテルに設置されたH.I.B.T.本部でラグナ・ニグエル・ビルフィッシュ・クラブの4名と合流。メンバーはキャプテンのブルックス・モリスBrooks Morris、何度か共に食事をしたことがあるH.I.B.T.初参加のデイル・ウォルドロンDale Waldron、長年モリスと共に参加しているエルマー・グッドElmer Good、参加8回目の、いつも陽気で紳士的なロイド・チェバースLloyd Chavers。エルマーとロイドにはその日が初対面だったが、二人とも暖かい笑顔で歓迎してくれ、僕の緊張をほぐしてくれた。

今回のH.I.B.T.は28チームが参加、7月24日~28日の間、毎日7時~16時:1日9時間×5日間=合計45時間をポイント制で競う。地元ハワイ、次いでカリフォルニアからの参加が多いが、バハマ、フロリダ、パプアニューギニア、オーストラリア、ニュージーランド、遠くは南アフリカやケニアからも参加している。日本からは「プレデター・フィッシング・クラブ」、「オリンピアン・ドリーム・フィッシング・クラブ」、加えてハワイ在住の日本人チーム「コナ・ゲーム・フィッシング・クラブ」の3チームが参加した。

ラグナ・ニグエル・ビルフィッシュ・クラブの2006年H.I.B.T.

Day1 乗船艇・ライボビッチ37<ハムディンガー>  ノー・フィッシュ/ノー・バイト

デッキハンド(デッキー、クルー)にオスキー・ライスが乗っている。彼はブルックスが’86年にグランダーを釣り優勝した時のボート<イフ・ヌイ>のキャプテンだったフレディ・ライスの孫だ。残念ながら、この日はアタリに恵まれずNo Fish。しかし、ハワイのカジキ釣りに関して多くの話を聞き、スポーツ・トローリングの歴史について学べた貴重な一日だった。

ちなみに、このボート、Day3には今大会最大魚の270キロと同時に160キロをボートに積み、なおかつ2尾のカジキをタグ&リリースしてヘンリー・チー杯(ボート部門)を制覇した。この艇、3日目以外の4日間はノー・フィッシュで、1日のポイントで勝ってしまった。

Humdingerが獲った今大会最大魚の270キロ (ガンネルに腰掛けているのがオスキー)

Day2 バートラム40<オン・ライン> 2バイト-1T&R(スピアー・フィッシュ) 100ポイント

僕の初めてのフウライカジキは僕自身がアングラーを務めた。

カジキ釣りの聖書的雑誌「MARLIN」Dec/Jan2007に載った記事、左上はオープニングセレモニーの会場、右上は鼻の下を伸ばす筆者、下がボート部門優勝「ハムディンガー」

Day3 バートラム38<パメラ> 5バイト-2T&R(クロ&マカジキ) 500ポイント

この<パメラ>に抽選で当たったときは喜んだ。キャプテンのピーター・フーグスはコナのトローリング史には欠かせないキャプテンであるし、その息子のテディ・フーグスも世界的にも一級のデッキーだ。それ以上に僕がとてもうれしかったのは、昨年10月、豪グレートバリアリーフの広大なエリアを舞台に7日間の実釣期間で競われる「リザード島ブラック・マーリン・クラシック」に彼ら親子も来ており、初体面にも関わらず親しく接してもらっていたからでもあった。

この日はベイトの活性も高そうだったが昼前までバイトなし。そろそろ時合なんだけどなあと、ドアノブを付けたアウトリガーショートのティブロンリールSST30(ブルックスが開発に情熱を注いだオートマティックシフトの画期的なリール)を付けた50ポンド・カスタムロッドを「頼むぜ!」と左手で2回軽く叩く。その2秒後、そのロッドがガクッと音を立てしなった。

みんなに「来た!」と叫ぶと同時に、次のアングラーのデイルがロッドを取るために飛びついた。ファイティングチェアにさしているセンターロングの回収はデッキーのテディがするという。では、左舷ロングコーナーはデイルの様子を覗いながら、ゆっくり巻けばいいかなとロッドに近寄った途端、後ろから「タカ(僕のこと)、邪魔だ。どけ!」とブルックスが僕に体当たりしながら、ロッドに飛びついてルアーを回収し始めた。僕はあっけに取られ、リールをすばやく巻くブルックスを呆然と眺めていた。彼はやっぱり根っからのアングラーなんだと思い知らされる出来事だった。デイルは10分足らずで僕らの最初のブルーマーリンをタグ&リリースし、チームは300ポイントを獲得した。

ドアノブにHITしたティブロンSST30を巻くデイル
名デッキ―Teddyがリーダーを獲って、フックを外している。彼もカジキ界の有名ファミリーで、つい最近の「MARLIN」にも投稿した記事を見つけ、喜ばしい思いをプレゼントされた。

それからちょうど1時間後、センターリガー(ハワイではスティンガーと呼ぶことが多い、ショットガンという所もある)のルアー後方にヒレが見えると同時にヒットし、ロイドがファイトに移る。続いてロングリガー(アウトロング)にもヒット、回収に向いつつあったデイルはそのままファイト。それに続いて左舷ショートコーナーを回収していたエルマーのラインが急に引き出され、トリプル・ヒット。しかし、2分足らずで2尾がフックオフし、1尾のみを僕がタグを打ち、テディがフックを外してリリース。

トリプルヒット → 1尾フックオフ → 回収中に再びヒットし、一時はクワトロヒット
僕のハワイ初TAG はストライピー(マカジキ)

50ポンド・タックルでのマカジキのタグ&リリースで200ポイント追加。誰もがあの逃げたマカジキも獲れていたら暫定で2位だったのにと、楽しそうだが悔しさも見せていた。みんなやっぱり想いが強いなあと、この場に集ったことの必然を再認識させられた。

Day4 ハトラス46<グランド・スラム> 1バイト-1ファイト-ノーフィッシュ

昼過ぎまでまったくの静寂。

アウトリガーのラバーバンドが外れたので、付け直しに僕がFBから降りると、途端にショートコーナーが鳴り始めた。

またまたアングラーの通り道を僕が塞いでいる。次のアングラー、ロイドの邪魔にならぬよう僕が端に避けるのと同時に100キロくらいのブルーマーリンがボート間近でジャンプ。それから潜り、約150メートル後方で数回ジャンプした後、再度潜りはじめた。その後はこのサイズにしてはかなりてこずるファイトになった。

ロイドの汗だくのファイトが続く。15分を過ぎた頃、やっとダブルラインの先に、水圧でスナップスイベルの位置まで押しやられたルアーが見え始めた。リーダーをデッキーが掴む頃にはフックが尾びれの30cmくらい前に刺さっているのが見えた。最後にジャンプした時にフックが外れ、幸か不幸か尾に引っかかったのだろう。キャプテンはそれを見た瞬間に失格でノーポイントだと船上の皆に告げた。で、デッキハンドもカジキが力強く抵抗し始めてもリーダーを放さず、横でタグ棒を構える僕が後1メートルでタグを打てそうなので強引に引き寄せた。途端、フックが尾から肉切れして外れてしまった。

今回のようにリーダーを強引に引けないケースでは、カジキがもう少し素直にボートに近寄るまでいったんリーダーを放し、次のチャンスを待つか、ボートをすばやくコントロールし、タグを打つのが正解だ。後にルールを調べると、タグを打ていれば今回のケースはカウントされ、300ポイントとなっていたことがわかった。ブルックス・モリスはデッキハンドから意見を求められた際、今回のミスを声は荒げず紳士的に指摘。後は船上の全員で静かにこの悔しさを共に耐えて、忍んだ。

この日はちょっとしたドラマもあった。大会参加艇ではないチャーターボートが大会エリアの真ん中で1027ポンドのグランダーを釣ってしまった。艇は<サンダウンナー>。たまたまこのキャプテンとは大会前夜にホテル前のバーで会っていた。モリスに長年敬意を抱いていたと声を掛けて来て、意気投合したエリック・ラスナックだった。ルアーメーカーでもある彼は、僕がルアーも扱っていると知ってセールスアプローチも交えたルアー談義に一花咲いた。これもブルックスがいればこその出来事で、彼とカジキ釣りとの因縁の強さを感じさせるエピソードに思えた。

「SUNDOWNER」が獲ったGrander Blue

Day5 アライド43<マーリン・マジック> 3バイト – 1タグ&リリース/3ファイト 200ポイント

キャプテンは著名なマーリン・パーカーとは違い、マーリンから船を任された30代前半のケビン・ハイバード。

パーカー氏と何年か前に一度電話で話したことがあったが、会ったことが無かったので少々残念な気もしたが、このケビンとデッキハンドのジョン・ベネットに出会えたことも非常に意味深いと感じられた。同じ匂いのするバディーといえばいいのか。これもまたブルックスの魂が結びつける故なのか。

僕らの最終日はベイトの活性が非常に高い状況で始まった。いい兆候だった。

アヒ(キハダ)やアク(カツオ)がベイトを追いジャンプを繰り返す。海鳥がその上を旋回する。10秒ほどするとそのナブラは消えるが、また100メートルほど離れた辺りに現れる。これの繰り返しで、中型のフィッシュイーターも何かに脅えつつ餌を追っているのが想像できた。

あちらこちらでマグロやカツオのJUMP JUMP JUMP

スタートフィッシング後3分で他艇がカジキとファイトし始めていた。しかし、11時まで僕らにはバイトもなく、快調なのは僕がカメラのシャッターを押す音と、ケビンたちとのカジキ談義だけ。

ブルックスもキャビンで、大物が追ってくるのを焦燥と期待とそれ以上の何かが混ざった想いで待っているんだろうなあと、FBで夢想していた僕の横で、後ろを見ていたデッキーのジョンが「センターに追ってきた!」と叫ぶと、アフトデッキに駆け下りた。センターロングのバレット型ルアーを追う背びれを見て僕もカメラを肩に架け、ジョンの後を追った。

センターリガーのラバーバンドが外れると同時に細身のカジキが数回跳ねる。リールは順調にラインを引き出しているので、カメラのシャッターを何度か押してからリールのハンドル・グリップに手を添えた。ラインの出が遅くなると同時にリーリングを始める。横でルアーを回収しているロイドのロッドも大きく曲がり始めた。ダブルヒット!

互いのラインが緩まないように注意しながら巻始めて10秒もしないうちにふっとライン・テンションがなくなった。「外れた!」と叫ぶ頃には、アウトロングを回収しているデイルのロッドも曲がっていた。再度ダブルヒットで、暫し船上はヒートアップ。が、ロイドのロッド・ティップも真直ぐに伸びてしまい、デイルがファイティングチェアに座りファイトする。数分で僕がタグを打ち、リリース。

僕が背びれの下にタグを打とうとすると、ジョンが「そこじゃないよ! もっと後ろ!」と言う。僕は首を傾げつつも指示通り魚体の後ろ上部にタグを打った。リリース後に尋ねると、「ビルフィッシュ・ファウンデーションは以前推奨していたタグを打つポジションを最近変更したんだ」と教えられた。 僕らはこの後、ヒットなくストップフィッシング。ブルックス・モリスと共にBIG ONEをと願っていただけにかなり残念だったが、それでも彼とのKONAは僕に特別な時間と多くの宝物に気づかせてもらえた、煌めく一週間だった。

69尾のカジキを得た06年大会

5日間の釣果は、

・クロカジキ(Pacific blue marlin):タグ&リリース33尾/検量5尾(検量は300ポンド=約136kg以上)。検量魚は594 lbs を最大に399 lbs, 396 lbs, 351 lbs, 317 lbsだった

・マカジキ(Striped Marlin):タグ&リリース8尾

・フウライカジキ(Short nose spearfish):タグ&リリース23尾

・アヒ(キハダ)部門:検量5尾

優勝は2032ポイントを獲得したマリブ・マーリン・クラブ。日本の「プレデターFC」はほとんど毎日ポイントを重ね、女性アングラー部門で1位を獲得した。また、チームとしてもちょうど1000ポイントを獲得し、6位に入賞した。われわれラグナ・ニグエル・ビルフィッシュ・クラブは800ポイントで8位タイ。 今回はハワイも日本同様水温が例年に比べて低く、各艇マカジキのヒット数が多かったが、フックオフもまた多かった。

カジキ釣りの魅力は永遠に

ブルックス・モリスはH.I.B.T.参加1か月ほど前に循環器系の手術をしており、大会直前まで参加できるかどうかという状態だったし、20年前にグランダーを釣ったギル・クレイマ―は心臓を患い、参加を断念せざるを得なかった。エルマーは以前、心臓発作で倒れ、回復後は自分の言いたいことがスムースに口から出てこないので、本人も少しストレスを感じているようだった。

けれど、半年前には「もう最後かな」と口にしていたブルックスが、この大会が終わる頃には「また来年も来るか!」ってな具合。みんなカジキに魅せられ、病気だろうが、老いだろうが克服していくようで、カジキが掛かると体が痛もうが、足がよろけようが、そのロッドに飛びついてしまう。生きることの一面がここに凝縮されているような気がした。

ブルックス・モリスが抱き続けるカジキ釣りへの情熱が同じような波長の持ち主たちを呼び寄せ、想いが受け継がれていくことを思い知らされる1週間でもあった。

僕も彼のカジキウイルスに感染し、胸の奥で熱を発し始めている。

His Soul Is Contagious.

The Fever Is Going On And On…

雑誌「ビッグゲーム」2号掲載記事に追記 

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